作品概要
タイトル:欅姉妹の四季
著者:大槻一翔
出版社:エンターブレイン(ハルタコミックス)
巻数:4巻(完)
見た目も性格も似ていない個性豊かな欅家四姉妹の騒がしい日常を、美しい日本の四季と共に描いた作品。その最終巻。
1~3巻の感想はコチラ
あらすじ
初夏から始まったこの物語も、季節は冬。
次女の朱美が一人暮らし準備を始めるなど、変わらないように思えた四姉妹の日常も、大きな転換期を迎えるのでした。
感想(ネタバレ度:高)
克斗、再び
1~3巻の感想記事で「面白いのかそうでないのか、判断に困るまま3巻まで読んでしまった」と書きましたが、3巻まで読んだということは多様なりとも面白さを感じていたことは間違いないでしょう。
しかし4巻に関しては自信を持って言えます。面白くなかったと。
もちろんこの作品に何を求めるかによって評価は変わってくるのでしょうが、四姉妹の和気藹々とした何気ない日常をただ描いてほしかった私にとっては、ドラマ要素を盛り込み過ぎて(主に男関係)望んでいたものとは完全にかけ離れてしまいました。
ここから先は不満点をダラダラと好き勝手に書き連ねていくだけなので、この作品のファンの方は読まない方が精神衛生上よろしいかと思われます。
まずは最大の不満点である男キャラの存在について。
この作品の男キャラと言えば、四姉妹の隣の家に住む兄弟・克斗と鉄矢です。
そもそも私は女の子がキャッキャやってる日常物に男が絡んでくるのが大嫌いなんですが、特に克斗の方が明らかに下心を覗かせながら四女・瞳ちゃんに近づいていたため、かなりイライラしていました。
しかし3巻では出番が無かったため、
評判が悪くてリストラされたか。
もう二度と見ることもあるまい…さらば克斗。
と、かなり都合よく解釈(というかほぼ願望)していました。
ところが……4巻では出番こそ多くないものの、いつのまにやら瞳ちゃんとラブラブな関係になっていて、かなり好き勝手やっちゃってくれてます。
あの後、2人で神社に行って何をしたんだろうか。
気になって夜も眠れない…。
しかし、そんな克斗が霞むほどに、私のヘイトを一身に集める男が登場します。
それは克斗の父親で、こいつがデリカシーのカケラも無い下品なオッサンでして、この親父の息子というだけでも克斗と瞳の交際を反対する理由になるくらい不快な存在でした。
仮に私が瞳の父親だったら、年頃の女の子をあの親父のいる家に遊びに行かせるのは心配でしょうがないですね。エロ漫画的な展開になっちゃいそうなので。
できれば近所付き合いも避けたいくらいです。
万が一、瞳と克斗が結婚なんてことになったら、あの親父と親族になるのかと思うと……ゲロ吐きそう。
消えた冬
もう一つの不満点が、季節感が全く感じられないこと。
この作品のコンセプトは「日本の四季の移り変わりを、4姉妹とともに描く」だったはずです。作品紹介にも書いてます。
まぁこれに関しては1巻から既に破綻していて、初夏~秋が描かれた1~3巻も取り立てて季節感を得るようなことはなかったので、あまり期待はしてなかったんですが。
それでも4巻はクリスマスや正月といったビッグイベントが目白押しな冬が舞台なわけですから、否が応にも季節感は高まってくるはずです。
ところが結果は、過去ワーストの季節感の無さ。年が明けたのかどうかすら分からないという状態で、気付いたときにはもう春になってました。
で、冬のイベント事を全てスルーしてまで何が描かれていたかというと、季節とは全く関係の無い次女の引っ越し独立話……。
服装で冬だというのは分かるけど…って感じだな。
どの季節でも成り立つ話ばっかりなのよね。
別に騙されたとまでは言いませんけど、看板に「四季」を掲げるなら、もうちょっとどうにかしてほしかったですね。
裏切りのいずみ
そして今回、一番ガッカリさせられたのが三女・いずみでした。
上記の不満点に関しては1~3巻までずっと思っていたことなので織り込み済みであり、それでもこの作品をここまで読んできたのは、ひとえにいずみちゃんがいたからです。
高校生にしては子供っぽいところとか、それ故の無防備なお色気とか、ルックスも含めて一番のお気に入りだったんですが……。
最後の最後に、株を大きく落としてしまいました。
そのきっかけとなったのが先にも書いた次女の独立話でした。
家を出て一人暮らしをすることになった次女・朱美に対して、出て行かないでと猛反対していたいずみちゃん。
結局朱美は出ていくわけですが、その引っ越し作業中、賃貸契約のお金が入った封筒を見つけたいずみは、最後に困らせてやろうと封筒を隠してしまいます。
もちろん悪意ではなく、大好きな姉の気を引きたい一心だったんですが、当然大騒ぎになり色んな人に迷惑をかける結果になるのでした。
40万が消えたらシャレにならんことくらい分かるだろうに…。
高校生にもなって、こうなることが予想もできないバカっぷりに、いずみ贔屓の私でもさすがにドン引きしてしまいました。
しかも両親を早くに亡くし、決して裕福とは言えない暮らしをしてきてお金の大切さを分かっているはずなのに軽率なこの行動。
いくらホットパンツで美脚をさらしても、許さんぞ俺は。
そのとおり。
謝罪は靴下を脱いでからにしてもらおうか。
しかもこれだけに留まらず、いずみは更なる失態を重ねます。
陸上部の女友達が、部室で男子と交尾に励んでいる場面に偶然出くわしてしまったいずみちゃん。
こういった方面に全く免疫が無いいずみは「男なんてクソや!」みたいになってしまい、他の姉妹たちに男の影が無いか過敏になってしまうのですが……。
結局は自分自身が、いの一番で同級生の男子とイイ感じになってました。
な、なんやこのダブスタ女…
今までの寵愛を返せや。
推しのスキャンダルが発覚したドルオタみたいな反応ね。
将来的には当然どの姉妹もどこぞの男とくっつくことになるんでしょうが、作中でわざわざ描いてほしくなかったです。
まとめ
4巻に関しては、私が嫌いな要素を煮詰めたような内容になっていたのが残念でした。
作者さんが描きたいもの、私が求めているもの、3巻までで微妙にズレてることには気づいていましたが、最終巻でそれが顕著に表れたって感じですかね。
もちろん勝手に期待していた私が悪いんですが。
逆を言えば、私が嫌だと感じてた部分を好きだった人にとっては、とても満足できる最終巻なんじゃないでしょうか。
ジャンル的には日常漫画になると思うんですが、日常漫画が好きではない人の方が楽しめる内容かもしれません。