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竹良実『辺獄のシュヴェスタ』全6巻感想 魔女狩りで母を失った少女の復讐劇

タイトル:辺獄のシュヴェスタ
著者:竹良実
出版社:小学館(ビッグコミックス スピリッツ)
巻数:全6巻

16世紀のヨーロッパを舞台に、魔女狩りによって母を失い施設に収容された少女とその仲間たちの復讐劇・脱出劇を描いた作品。

復讐劇の始まり

貧しい家に生まれた少女・エラは、その賢さと激しい気性が災いして家族から忌み嫌われ、奴隷として売られてしまうことに。
人買いの馬車から逃げ出し窃盗で生きながらえていたエラは、薬の調合で生計を立てる才女・アンゲーリカに拾われ、本当の親子のように暮らしていました。

ところがある日、薬剤師としての腕の良さがアダとなり、絶大な権力を誇る修道会からアンゲーリカに魔女の疑いがかけられてしまいます。
そして行われた魔女裁判。アンゲーリカは凄まじい拷問を受け、嘘の証言をさせられた上で殺されてしまいます。

この惨劇を目のあたりにし、復讐の鬼と化したエラ。
処刑された魔女の子供たちが集められた修道院に連行され、そこで飼い慣らされたフリをしながら出会った仲間たちと助け合い、牙を研ぎ続けて復讐の機会に備えるエラの、辛く苦しい戦いの日々がここから始まるわけです。

 

エグさを我慢してでも読むべき

全編通して重苦しいシリアスな空気の作品で、コメディ要素は一切なし。
私にとってはどちらかと言えば苦手な部類ですが、全体的な感想としては一言。素晴らしい作品でした。
圧倒的に不利な状況下でハラハラドキドキさせるシーンの連続、そんな中でも決して心が折れることなく知恵と勇気と鋼の意思で戦い続けるエラの姿は感動的ですらあります。

ただ…
テーマがテーマだけに、見るのが辛い場面も多いんだよな。アンゲーリカの魔女裁判とか。

拷問シーンとか、エグい場面は度々出てくるわね。

ラフな絵柄なので比較的マイルドですが、苦手な人にとっては少々キツいかもしれません。

作中にはムカつくキャラ達もたくさん出てきますが、因果応報で軒並み痛い目にあってくれます。エンディングもハッピーエンドとは言えないかもしれませんが、絶望に次ぐ絶望だったそれまでの流れからは考えられないほど爽やかな読後感です。

ひとつだけ残念だった点を挙げると、最後の方が駆け足気味の展開になってしまっていたところ。打ち切りなのか何なのか事情は分かりませんが、もう少し掘り下げて描いてほしかった部分が多々ありました。

 

陰気な女子校へようこそ

この作品の舞台は女子修道院なので、当然ながら登場人物のほとんどは女性です。
平たく言えば女子校みたいなもんですが、ちょっと雰囲気が陰鬱過ぎてキャッキャウフフ的な物は全くありません。極限の状況でも思いやり助け合うエラと仲間たちの姿は美しいですが、百合的なものも無し。

こういった作品では、女の子を慰み者にする不快なゲス野郎が出てくるのが心配されるところですが、直接的にそういった描写はありません。
目立った男キャラといえば、ラスボスの虎の威を借るトンスラ野郎が調子こいてるくらいです。

とは言え、多少のお色気要素は欲しかったよな。

そうかしら?
まあ確かに、こういうダークな作品とエロスは親和性が高いとは思うけど。

浮ついた場面など全く無いから、萌えだのお色気だのを求める人は要注意だな。

誰もこの作品にそんなもの期待してないでしょ。

1巻表紙のボロボロの服を着たエラの、ふとももとかワキ腹に惹かれて変に期待しちゃう人がいるかもしれないから一応ね。

そんなのアンタくらいよ。

最後にしょうもないことを書いてしまいましたが、本当に良い作品なのでぜひ読んでみてください。

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