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大塚志郎『びわっこ自転車旅行記』シリーズ感想 三姉妹の超長距離自転車地獄

作品概要

タイトル:びわっこ自転車旅行記
著者:大塚志郎
出版社:竹書房(バンブーコミックス)
巻数:1~6巻(以下続刊)

東京→滋賀の500km自転車帰省を筆頭に、三姉妹の超長距離自転車旅行の模様を描いたコメディ作品シリーズ。

 

あらすじ

東京でそれぞれの夢を追う、滋賀出身の五百住(よすみ)家 三姉妹は、大きな悩みを抱えていました。

駆け出しアニメ演出家の長女・タカミ
中堅漫画家アシスタントの次女・シホ
ミュージシャン志望の三女・コン

その職業柄ゆえに不健康を極める三姉妹は体重が激増。
自転車が共通の趣味である彼女たちは運動不足解消を兼ねて、東京から滋賀県大津の実家まで500kmの距離を自転車で帰省することを決意するのでした。

 

感想(ネタバレ度:低)

どれから読んでも大丈夫

作者の大塚志郎さんの実体験をもとに、三姉妹の超長距離自転車旅行を描いた半ノンフィクション的コメディである本作。
作品概要では便宜上、巻数を1~6巻と表記してありますが、実際には巻数が振られてなくて訪れた旅行先ごとに「○○編」という具合になってます。
発行順としては、

  1. 東京から滋賀の実家に帰るまでを描いた「無印」
  2. 琵琶湖一周と海外遠征を描いた「琵琶湖一周編・ラオス編」
  3. 次女・シホの高校時代の夏休みを描いた「滋賀 → 北海道編」
  4. 大きな2つの島を一周する「淡路島・佐渡島編」
  5. 三姉妹に加えて両親も参加する「屋久島編」
  6. JKシホの北海道編の復路を描いた「北海道 → 東北編」

となっております。
いやー、この一覧を見るだけでもしんどそうです。特に「滋賀 → 北海道」なんて、車の運転でも疲れそうでイヤですね。

 

自転車旅行のお供に

自転車が題材で、しかも元々は同人誌として発表された作品と言うことで、素人には付いて行けないディープな自転車談義が展開されるのかと最初は心配してました。自転車のメーカーがどうだとか、カスタマイズはこうしろとか。

しかし本シリーズの主題は「長距離を走る」ことであって、自転車はあくまでも道具に過ぎません。
最初から最後まで、ただひたすらに三姉妹が自転車を漕いでいるだけなので、自転車そのものにスポットが当たることはほとんどありませんでした。

タイトルが「旅行記」なんだから当たり前だろ。

旅番組で電車の製造メーカーの話とかしないものね。

なので私のような自転車の知識はさっぱりな人間でも、全く問題無く楽しめる内容です。逆に、濃厚な自転車オタクの方から見たら物足りないかもしれませんが。

もちろん作者さんの実体験が元になっているだけあって、自転車で長距離を走る時の注意事項等は参考になると思うので、自転車旅行の入門書としても活用できそうです。

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出典:大塚志郎 著『びわっこ自転車旅行記』 / 竹書房


とは言え、玄人の自転車乗りから見ると色々とツッコミたくなる描写も多いみたいなので、あまり鵜呑みにし過ぎるのは危険なのかもしれませんが……。

 

子供は容赦なし

この作品の最大の見所は、灼熱の太陽に晒されながら、噴き出す汗と疲労でドロドロのボロボロになっていく女の子たちです。
女の子と呼ぶには少々平均年齢が高い(二十歳前後)気はしますが、その子たちの汗臭そうな感じがなんともたまらんわけです。

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出典:大塚志郎 著『びわっこ自転車旅行記』 / 竹書房

作者さんの体験談を元にした作品ですが、登場人物をそのまま作者本人にせずに女の子に置き換えたのは大正解と言えるでしょう。
汗臭そうな女の子には変態心をくすぐられますが、汗臭そうな男なんぞ不快感しか生みませんからね。そもそも男だったら読んでもいないとは思いますが。

ただ、女の子に置き換えた弊害もありまして。
それは女の子が行うにしては無謀過ぎる行動が多々あることです。
特に北海道編では女子高生のシホが1人で野宿をするなど、漫画とはいえ心配になる描写が多過ぎて気が気じゃありませんでした。

JKが野宿はキケンだな。
おじさんの家に泊まってく? 何もしないから…ハァハァ。

アンタみたいなのがいるから危ないのよ。

ほ、ほんとに何もしないから!
ちょっと匂いを確かめるだけだって!

気持ち悪いわね…。

ちなみに最新刊の「北海道 → 東北編」で、シホが女児から「おねーちゃんくさい♪」と言われてしまうシーンがありました。うーむ、やっぱり臭いのか。

個人的にはそんな臭いシホちゃんが、ルックス等を含めて三姉妹の中で一番好みなんですが、映画の趣味は「ゴジラはビオランテが至高」といった長女・タカミの方が合いそうです。『ゴジラvsビオランテ』面白いですよね。
ゴジラ映画を全て観ているわけではありませんが、1番好きなゴジラ映画を聞かれたら私もビオランテと答えます。2番目は『ゴジラvsモスラ』かなぁ。
『シン・ゴジラ』も大好きですが、あれはなんか別枠な気がします。

 

まとめ

シリーズを通じて、ただ自転車を漕いでシンドイという話ばかりで、はっきり言ってしまえばワンパターンな作品です。
どれを読んでも同じような展開で、しかも特別面白いというわけでもないんですが、なぜか新刊が出るたびに読みたくなる不思議な魅力があるんですよね。
自分では絶対にやらない行動を追体験できる、知らない世界を覗き見できるというのはやっぱ楽しいもんです。

ただ、自転車で長距離旅行するときの辛さや苦しさばかりが強調されて、自転車旅行の魅力みたいなのがイマイチ伝わってこないのはどうなのかな…と思いました。
ネタとしては面白いですが、自転車旅行の普及という観点から見るとプラスになるどころかマイナスになっているような気がします。
この作品を読んで「よし、自転車で旅行しよう!」と思うのはドMの人くらいなんじゃないかなと思いました。

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