作品概要
タイトル:賢者の孫
著者:原作/吉岡剛 漫画/緒方俊輔
出版社:角川書店(角川コミックス・エース)
巻数:1~11巻(以下続刊)
小説投稿サイト「小説家になろう」で連載されていた小説のコミカライズ版で、ファンタジーな世界に転生した現代日本人が、チート能力でひたすら無双しまくるという作品。
2019年4月よりアニメが放送中。
あらすじ
残業を終え、帰宅途中にトラックに轢かれて死亡した青年サラリーマン。生まれ変わった先は、魔法が日常に存在するファンタジーな異世界でした。
そこで「賢者」と呼ばれ英雄視される男・マーリンに拾われた彼はシンと名付けられ、魔法と武術の英才教育を受けて育ち、そこに前世の記憶も加わって規格外の能力を得ることに。
やがて成人(15歳)となったシンは高等魔法学院に進学し、多くの仲間と出会うと共に、国を揺るがす事件に巻き込まれていくのでした。
レビュー ★★★★☆
- いわゆる俺TUEEEEな異世界転生モノ。実力・容姿・地位・名誉と全てを兼ね備えた主人公・シンのチートっぷりとご都合主義に、爽快感を感じるか嫌悪感を感じるかで好みが分かれそう。
- ストーリーやバトルを楽しむというより、無双しては賞賛を受けるシンに読者が自己投影して気持ち良くなるのが主目的の作品です。
- 可愛い女の子がたくさん出てくるのは嬉しいポイント。ただし序盤からヒロインのシシリーが圧倒的にヒロインポジションに鎮座しているので、ハーレム色は思いのほか薄いです。
- ネット上では低評価が目立ちます。たしかに褒めるべき点があんまり見つかりませんが、アンチの声が大きい作品なので評判に惑わされないように。個人的には結構好きだったりします。
感想(ネタバレ無し)
俺TUEEEEの極み
異世界転生モノの醍醐味と言えば「主人公がチート能力で無双する」この1点に尽きるでしょう。
この作品も御多分に洩れず、前世の記憶が残っている主人公・シンがその知識を活かしながら大いに無双してくれます。
そのチートっぷりたるや度が過ぎるほどで、本職の魔法はもちろんのこと近接戦闘でも圧倒的な強さを誇り、そのうえ「魔道具」を作ることに関しても天才的。
全てにおいて隙の無い強さで、どんな敵が相手でも苦戦すること無く次々と粉砕していきます。
我招く無音の衝裂に慈悲は無く、汝に普く厄を逃れる術も無し!メテオスウォーム!!
…ふぅ、きまったな。
詠唱魔法ってダサいらしいわよ。
んだとぉ!?
誰だ!そんなこと言ったやつは!
シンくん。
シ、シン先輩か。
じゃあしょうがないな。
あ?
ビビってんの?
だってあの人…
コネがえげつないじゃん?
そうなんです。
シン君は戦闘力だけではなく、国家の英雄であるマーリンに拾われ育てられたという出自もあって、コネクションも最初からチートレベル。
国王をオジサン呼ばわりで王子はマブダチ、武術の師匠は元騎士団総長などなど「偉い人はだいたい友達」という状態です。
やり過ぎていっそ清々しいほどの俺TUEEEEっぷりがこの作品の最大の魅力であり、ひたすら繰り返される「シンがチート能力を発揮して無双する ⇒ 周りの人々がビックリ仰天、褒め讃える」という黄金パターンが、最高に気持ち良くて楽しいのです。
不評なのに人気?
しかしその余りにもご都合主義な設定や、作者の願望が具現化したような内容に「気持ち悪い」「イタい」「見てらんない」と感じる人も多いようで、SNSや通販サイトのカスタマーレビュー等では低評価が目立ちます。
なので人気が無いのかと思いきや、その割には発行部数は好調のようですし、アニメ化までされています。
ちょっと不思議な気がしますが「賢者の孫は叩いてナンボ」「賢者の孫を好きなのはキモオタだけ」みたいな雰囲気が出来上がっているので、否定的な意見の方が目立ってしまうのは仕方がないところでしょう。
あと、内心では面白いと感じていても、そんな自分を認めたくなくて過剰に叩いてしまう人も中にはいるんじゃないでしょうか。
いやーキモいわーwww こんな作品どんなやつが読んでんだよww マジきっついわwww
まあバカにするのが楽しいから我慢して最後まで見届けるけどねwww ネタになるしwwwww
…でもホントはシンの境遇が羨ましいんでしょう?
は?そ、そんなわけねーし!
なに言っちゃってんのお前!?
シンに自分を投影して気持ち良くなっちゃってんでしょ?
ホントは楽しくてしょうがないんでしょ?
ちっ、ちげーよ!
オレは、オレはこんな作品なんて…!
認めなさいな。
楽になるわよ?
ち、ちがっ
オ、オレは…シシリーの…オシリーが…がががが…!
精神が耐えられなかったか…
実際のところどうなのか分かりませんが、この作品が諸手を挙げて絶賛される世の中というのもそれはそれで問題な気がしますし、今のような扱われ方がちょうどいいのかもしれません。
残念ながらハーレム要素は無し
チート能力の他にもう一つ、この手の作品で欠かせないのがハーレム要素。この作品にもハーレムの構成員として申し分の無い美少女たちが大勢出てきます。
顔面偏差値もトップクラスのシン君ですから、このご都合主義の世界であっという間にハーレムの出来上がり…かと思いきや。
意外なことに、ヒロイン役のシシリーと出会った時から相思相愛のご様子で浮気する気配も無いので、他の女の子たちが入り込む余地がありません。
せっかくご都合主義全開の世界なんですからハーレムラブコメ的な展開があってもよさそうなもんですが、作者がハーレムに興味が無いのかそれとも最後に残った良心なのか、恋愛面の描写に関してはやけに控えめなのが残念でした。
個人的にはシンが無自覚にフラグを乱立しまくって、最終的には一夫多妻エンドくらいやってほしかったんですが。
まぁこの作品にハーレム要素まで備わっていたら今以上に叩かれること必至でしょうから、シシリー一筋なシンを描くことで多少なりとも作品に対する好感度が底上げされてるのは良かったのかもしれません。
どうせなら女の子を食いまくって「またオレ何かヤっちゃいました?」くらい言ってほしかったけどね。
ゲス過ぎるでしょ…
まとめ
先に書いた通り、過剰なまでの俺TUEEEっぷりを楽しめるかどうか、あからさま過ぎるご都合主義に疑問を抱かず読むことが出来るかどうかで、この作品に対する評価は大きく変わってきます。
まともな感性を持つ人間からすれば、とても見てられない内容なのかも知れません。
しかし灰色の学園生活を送っている若者や、その延長線上で鬱屈した毎日を過ごす私のようなダメ人間の現実逃避のツールとしては、なかなか優秀な作品と言えるんじゃないでしょうか。
好みは分かれますが刺さる人には刺さる作品なので、気になる方はぜひ読んでみてください。
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