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筒井大志『ぼくたちは勉強ができない』13~17巻感想 花火のジンクスは時空を歪める

作品概要

タイトル:ぼくたちは勉強ができない
著者:筒井大志
出版社:集英社(ジャンプコミックス)
巻数:1~17巻(以下続刊)

得意分野以外は壊滅的な成績の天才美少女3人と、彼女たちに勉強を教えることになった秀才男子の奮闘を描いたラブコメディ。ひとまずの完結。

 

あらすじ

紆余曲折ありながらも、ついに大学受験本番を迎えた成幸とヒロインたち。
はたしてみんなは志望する大学に合格できたのか。そして成幸は、いったいどのヒロインとハッピーエンドを迎えるのか……?

 

感想(ネタバレ度:高)

まだだ!まだ終わらんよ!

以前1~12巻の感想を書いたので便宜上13~17巻の感想としていますが、実質的には17巻の感想となります。
1~12巻の感想はコチラ


さて、本作品は17巻をもって、ひとまずのエンディングを迎えました。
しかしこれにて完結、めでたしめでたし……というわけではありません。

終わりだけど終わりじゃない?
どうゆうこっちゃ。てめぇオレをおちょくってんのか!

と、せっかちな方はお怒りかもしれませんが、順を追って説明します。
ここからは思いっくそネタバレしてますんで、未読の方は注意してください。

勝負に勝って試合に負けた

理珠・文乃・うるか・あすみ・真冬先生と、魅力的な女の子が多数登場するこの作品。
各々推しキャラは違えど、読者にとって最大の関心事は、主人公の成幸が最終的に誰と結ばれるのか、というところですが……成幸はうるかとくっつきます

真冬先生を推していた身としては、正直この結末は残念だったと言わざるを得ません。
真冬先生が勝つ見込みのない木っ端キャラだったならば「まぁ仕方ないか…」と諦めもつくんですが、ひいき目を抜きにしても真冬先生の存在感は別格で、15巻くらいまでは真冬先生が勝ってもおかしくない流れだったように感じていたので悔しさも倍増です。

くそっ!なんでじゃあ!
キャラクター人気投票でも、ぶっちぎりの1位だったじゃろがい!

民意がないがしろにされるとは…
民主主義は死んだ!

まぁ人気投票の結果がストーリーに影響することは無いとは思いますが、それでも風は確実に真冬先生に吹いていたように思います。

アニメの方は未視聴ですが、アニメではうるかENDだったということで「まさかアニメと同じエンディングにはしないだろう」という考えもありました。
うるかでなければ真冬先生で間違いない(文乃と理珠は早々に脱落してたように見えた)と、半ば勝利を確信していたこともあり、勝てた試合を落としてしまったような印象が強いです。


ここからは推測ですが、連載開始当初は真冬先生がここまで大きな存在になるなんて、ましてや正ヒロインの最終候補に残るだなんて、作者さんを含めて誰も考えていなかったんじゃないでしょうか。

ところが連載を続けていくうちに先生はどんどん可愛くなり、読者人気も予想外に出てしまいました。作者的にもお気に入りキャラに育ち、ついつい活躍の場を増やしてしまい、さらにまた人気が出るという好循環。
その結果、成幸と先生がくっつくんじゃないか?という空気が出来上がってしまったわけです。

しかし、そろそろ物語を締めようかという段階に入り、作者さん(もしくは編集さん)に、ある懸念が生じてきたんじゃないでしょうか。

「このまま本当に先生を勝たせてしまっていいのか?」と。

超正統派な漫画雑誌である少年ジャンプで「先生×生徒」という、どこかイケナイ雰囲気や後ろめたさが漂うイレギュラーな組み合わせでエンディングを迎えてしまっていいのだろうか?
サブヒロイン枠だったはずの先生が、女子高生ヒロインたちを差し置いて主人公とくっついてしまっていいのだろうか?
そのような葛藤の結果、次点であるうるかENDに収まったような気がしてならないのです。

……なんて、私の妄想に近い邪推ですけどね。
ゴチャゴチャと書いとりますが、要は真冬先生の負けを認めたくない、哀れな負け犬の遠吠えみたいなもんです。
作者さんからしてみれば、

は?最初から全部決まってたことですけど?
妄想たくましいキモオタ乙。

って感じかもしれませんね。

もうちっとだけ続くんじゃ

そんなわけで舞台裏はともかくとして、成幸はうるかとくっつきます。
それ自体に関しては、悔しさはありますが素直に祝福できる終わり方ではありました。
長年の片思いが実ったうるかに対し「おめでとう、よかったね!」と思える、これはこれで素晴らしいエンディングだったと思います。

しかし問題はこの後です。
Twitterでネタバレくらっていたので知ってはいましたが……。
次巻からは「もし成幸がうるか以外と結ばれたら?」という、パラレルストーリーが展開されるのです。
つまり、複数のルートに分かれるギャルゲーのように、まず第1段として理珠、その後は文乃 ⇒ あすみ ⇒ 真冬先生と、計5人分のエンディング(うるかを含めて)が描かれることになるわけです。

これに関しては色々な意見があると思います。
ヒロインレースから敗退した推しキャラのエンディングが見れてラッキー!という人もいるでしょうし、大好きな『ぼく勉』をまだまだ読めて嬉しい!という人もいるでしょう。
しかし個人的には、

『ぼく勉』やっちまったなぁ!!

という印象です。
このマルチエンディング方式の採用に関しては、真冬先生が負けたことよりもガッカリしてしまいました。

スポーツで例えると、自分が応援してるチームがメチャメチャ見応えのある試合をしながらも負けてしまった試合後、勝者と敗者がお互いの健闘を称え合ってるのを眺めながら「悔しいけど良い試合だったなぁ」と感傷に浸ってる中で、「やっぱ今の試合やり直しで」と言われたような感覚です。

それから結果的に色んな女性に手を出す形になってしまう成幸の好感度も、彼に非が無いとはいえ爆下がりになってしまいそうな気がします。

そして何よりも、5人分のエンディングを描くくらいなら、1本の話をもっと掘り下げて描いてほしかったという思いが1番強いです。
特に17巻で文乃が自分の気持ちに気付き、寝ている成幸にチューしようとしていたところを他の女の子達(うるか含む)に見られてしまったシーンなんかは、そこからひと悶着起きて大いに物語が盛り上がっていくべき所だったはずです。
ところが、うるかENDが確定して物語を畳み始めているところでしたから、特に揉めることもなくエンディングに向かって粛々と話が進んで行ってしまったのは非常に残念でした。
成幸が女の子全員からの好意を知り、5人の間で心が揺れ動くという期間が全く無いまま終わってしまったのは、ハーレムラブコメとして非常にもったいなかったように思います。
あんまりドロドロの愛憎劇は見たくはないですが、やはりプチ修羅場くらいは見たいところですからね。

そしてうるかファンの人々も、他のヒロインとのエンディングを描くくらいなら、もっと成幸とうるかのイチャラブシーンを描いてくれよと思ったんじゃないでしょうか。
うるかルートに乗ってる割には、他のヒロインにも中途半端にスポットライトが当たり続けているような状況だったので、うるかファンとしてもどこか消化不良気味な終わり方だったように思えてなりません。

 

まとめ

なんだか文句ばかりになってしまいましたが、単純に1~17巻の内容だけで評するなら、望んだエンディングではなかったものの十二分に楽しめた作品でした。
女の子達は文句なく可愛かったですし。

マルチエンドへの不満や今後の展開に対する不安はありますが、読む前からあまり文句ばかり言うのもアレですからね。
ここは本来読めなかったはずの他ヒロインとのエンディング(特に真冬END)を楽しめることをポジティブに捉えて、大人しく待ちたいと思います。