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泉光『図書館の大魔術師』1~3巻感想 美麗な絵と作り込まれた世界観

作品概要

タイトル:図書館の大魔術師
著者:泉光
出版社:講談社(アフタヌーンKC)
巻数:1~3巻(以下続刊)

「本」に財宝並みの価値がある世界を舞台に、本好きの孤独な少年が全ての本を取り仕切る中央図書館の司書と出会い、成長していく様を描いたファンタジー作品です。

 

あらすじ

物語の始まりは辺境の小さな村・アムン。
そこに住む本が大好きな少年・シオは、村の図書館に入れてもらえません。

その理由は彼が貧民街に住んでいること、そして異民族とのハーフである彼の見た目が、他の村人達とは大きく異なること。
この村の人たちは大半が浅黒い肌に黒髪ですが、この少年は白い肌に金髪碧眼そして長い耳という、エルフのような外見です。

村のクソガキ共がこんな特徴的で目立つ外見を放っておくはずもなく、当然のように「耳長」と呼ばれイジメの標的にされていました。
それでもいつかは本の中の物語のように、自分を迎えに主人公が現れてこの世界から連れ出してくれると信じて耐えていたシオくん。

そんなある日、本の都・アフツァックにある中央図書館から派遣された司書(カフナ)の一団が村を訪れたことをきっかけに、シオの運命は大きく動き出すことになるのでした。

  

感想(ネタバレ度:中)

圧倒的作画

実は私、あらすじも読まずに表紙だけ見てこの作品を購入したんですが、中身を読むまでシオくんは女の子だと思い込んでいました。

表紙のショートヘアの女の子がカワイイな。
これはステキな作品の予感がしますねぇ……じゅるり。

その子、男の子なんだけど。

な、なんだってぇー!?
オレは耳の長さには寛容だが、チ〇コは許せねぇ男だぞ!

しょうもないこと言ってないで、とりあえず読んでみたら?

はぁー…
なにが悲しくて男子の成長を見守らなきゃならんのか……。


こんな感じで序盤からテンションはダダ下がり。
鼻クソほじりながら流し読みモードに突入するつもりでしたが、そんな私を再び物語に引き込むだけの力がこの作品にはありました。

その要因の一つは、作りこまれた世界設定
中央図書館の組織体系は興味深くてもっと詳しく知りたくなりますし、本の修復方法や薬の調合などは空想か現実か分からないほど具体的に記されています。

カバーの下にも設定資料がギッシリで、こういうのを読むのが好きな人はかなり楽しめるんじゃないでしょうか。

そして特筆すべきなのが、超が付くほど美麗な絵です。
雄大な自然から、本棚にギッチリ詰まった本の1冊1冊。そして描くのが面倒くさそうな司書たちの服の細かい装飾など、目がチカチカしそうなほどに描き込まれています。

作者さんはマゾなのかという疑問が湧いてくる、自らを追い込むようなデザインの数々は一見の価値ありです。

 

意外と優しい世界

主人公のシオくんは若干6歳にして両親がおらず、お姉ちゃんと貧民街で二人暮らし。
それに加えて容姿の違いから村ぐるみでイジメられているという、なかなかスパルタンな境遇です。

それだけに「シオくんを学校に行かせるために朝から晩まで働いているお姉ちゃんが、実は体を売っているんじゃないか」とか、「シオくんが司書さんに借りた大事な本をイジメっ子たちに奪われてボロボロにされるんじゃないか」とか、ショッキングな展開に備えて心の準備をしながら読んでました。
しかしそれは余計な心配で、村人たちも根っからの悪人というわけではありませんでした。

2巻以降はシオ君は村を出ますが、旅先で出会う人々もムカつく態度をとるヤツはいても、どうしようもない悪党は今のところ出てきてません。
全体的に最後は良い方に話が進んで行くので、ハードな話が苦手な豆腐メンタルの私みたいな人間でも安心して読むことができます。

 

いきなり7年後

この作品の魅力として忘れちゃいけないのが、美人ぞろいの司書や、司書を目指す女の子たち
「女の子」と呼ぶのをはばかられる年齢の方もいらっしゃいますが、特に1巻に登場する司書さんたちは美人なうえに有能な人材ばかりです。

ちなみに私のお気に入りはナナコちゃん(17歳)。
不愛想なのが玉にキズとのことですが、不愛想なところが可愛いんですよね。

美少女だと思ってたシオが男の子であるという事実を知ってからは、ナナコちゃんを愛でていくことを私は決意しました。
ところが1巻の最後で、物語は一気に7年後まで飛んでしまいます

物語の本番はここから。
1巻はシオが司書と出会い、司書になるためにアフツァックを目指すことを決意するまでを描いたプロローグに過ぎなかったのです。

ナナコちゃんが今後登場する機会はあるのだろうか。

あったとしても7年経ってんのよ?
ナナコちゃんも24歳だし、男がいるでしょうね。

ぎゃー!
やめてくれー!

結婚して子供を産んでいる可能性だってあるわ。

ひぃぃぃ~
今から震えが止まらねぇよ……。

派遣組の最年長だったアンズさんに至っては、もう40…

それ以上はアンズさんの目が開くから止めたまえ。
普段目を閉じている人が目を開くとヤバいってのは、乙女座の黄金聖闘士から学んだはずだ。

どうでもいいけど「せいんと」って打ったら「聖闘士」に変換できるのね。

 

2巻以降

そんなわけで2巻からは、成長したシオ君が司書試験に挑む様子が描かれています。
ストーリーもいよいよ本格的に動き始め、1巻から引き続きハイクオリティな作画で面白くないはずがない、と思っていたんですが……。

残念ながら2巻以降はあまり楽しめませんでした。
なぜならば、シオ君が私が嫌いなタイプのキャラクターに成長してしまっていたからです。

あんなに良い子なのに嫌いなの?
あんた歪んでんじゃないの?

うーん、良い子なのは分かるんだよ。
ただ、その良い子っぷりが鼻に付くというか……。

はぁ!?
ならばその鼻、へし折ってやろうか?

しょ、しょうがねーだろ?
個人の感覚的なもんなんだからさ。


ほんと些細なことなんですが、これがきっかけで1巻では全然気にならなかった部分までもが、2巻以降ではなんだかイラっとするようになってしまいました。

この作品の評価をSNS等で調べてみると、ほとんどの人が絶賛しているので私がおかしいだけなんだと思いますけどね。

 

まとめ

全体的に質が高く、万人受けするタイプの作品だと思います。
特に凝った設定で独自の世界観を築いているファンタジーが好きな人にはオススメ。
美麗な絵を見るだけでも楽しめる作品なので、表紙を見てピンときた方は読んでみて損はないはずです。

成長後のシオ君に不快感を覚えるのは多分私くらいだと思うので、今回の記事のネガティブな部分は全く気にしないでください。
ひねくれた私でも3巻の終盤とかは「ええ話やな…」とそれなりに感動したので、やっぱ良い作品なんでしょうね。

ちなみにタイトルの正式な表記は『図書館の大魔術師』の「図書館」の字は「くにがまえに書」という見慣れない字なので探すときはご注意を。

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